元老院議員諸君、
お集まりご苦労であった。
本日の議題は、他でもない、議長の選出である。
まずは、
新人の議員もおられるので
選考規定の概要を説明しておこう。
議長となる資格のあるものは
われわれ7名の内
企業選出のケリーアン議員と、拒否権を有する護民官のトラヤヌス議員を除く5名
投票ではなく、
全員の合意によって議長を選出する必要がある。
7日以内にそれがかなわない場合には
発言の記録が公示されたうえで
われわれは総辞職となる。
まあ、順当にいけば、暫定議長がそのまま議長になるのが
普通だろうけど
ここは冷静に、
われわれ元老院への支持率を考えれば
ラキ議員という選択になるね
何と言っても、期近の戦いで12連勝した英雄ですからね。
いや、正確には13連勝のようだね。
はい、皆様のご支援のおかげで
本日ここに来る直前に
13勝目を飾ることができました。
ラキ議員がどうということはないけど
学生上がりのお嬢様に、議長職が務まるとは到底信じられないわ。
通商連合との外交ラインを考えるに
ここは、デビ議員にお願いするのがベターですわ。
家族主義色の強い方が
議長に就任することには賛成できません。
少なくともデビ議員については、
例の暗殺疑惑の件もはっきりしていないですし
護民官としては、拒否権を行使いたします。
仮にも元老院議員たるものが
根も葉もない噂を元にご判断されては迷惑ですな。
それは違います。
判断するのは、われわれではなく国民ですから。
私ども元老院議員は、常に、その声に耳を傾ける必要があります。
いや、むしろ愚かな者どもの判断など
国家を害する行為としかいいようがありませんな。
デビ議員は国民が愚かであると
おっしゃるのですか。
それならば、その国民に選ばれた
私たちはどうなのですか。
何もそんなことは言っておらん・・
いずれにせよ
護民官殿が拒否権を発動された以上
これ以上、この議論は無意味でしょう。
話を戻せば
能力が未知数というだけで、
議長職から退けるという理由にはならないと思います。
つまり、ラキ議員を推すということですか。
国民の中には、
われわれ元老院議員が
日頃、私利私欲のための殺し合いをしているとの
偏った認識が広がっているところ
ここは、クリーンなイメージの新人を議長に立てることが・・
ラキ議員など、絶対にあり得んわ。
国民の評判ばかり気にしていては
正しい政治など、できるわけがなかろう
正しい政治ねぇ。
ラキ議員ご自身のお考えはどうですかな。
はい、ご推薦いただけることは大変光栄ですが
それはイメージによるものではなく
実績を伴っている必要があるものです。
そういう意味では、今回はご辞退させていただくべきだと思います。
ほらほら、
実績のない本人がやる気がないものを
無理にやらせる必要はないものだよ。
デビ議員。
その言い方はちょっと失礼ではないかしら。
どうしてかね。
実績がないと自分自ら言っているのだから
何も問題ないでしょう。
なるほど、それもそうね。
わざとらしい・・
今のところ、ラキ議員を推す声が強いものの
反対意見もある中で
議員自身は辞退したいとの意向のようだ。
私としては
それでもラキ議員が議長にふさわしいと思うのですが・・
それは同じファミリーの人間だからですか。
違うでしょう。
ラキ議員は、アートマン議員の姪とは言え
今は、ラキ家の一員なのです。
あら、ラキ家なんて
そもそもアートマン家の分家のようなもの
周囲からみたら、同一ファミリーの寡占にしか見えないわ
今更、
超核家族主義者にファミリーの話をされてもね。
それは他人がどうのこうの言う話ではない。
制度の面から言えば、
アマテラス議員の名前には、アートマンの文字は見つけられないし
これは列記としたラキ家の一員でしょう。
そうですよね。法務長官殿。
それは勿論ゲイツ議員の言われるとおりです。
そもそも、この議論はアートマン議員がラキ議員を推薦する理由に関するもので
ラキ議員の議長適格性とは何ら関係のない話になります。
確かに私の中には、姪に対する特別な思いがないとはいわない。
しかし、冷静に考えるに
彼女こそが、我々の存亡の危機を救うことのできる
人物であると確信しているんだ。
あらあら
存亡の危機って、いったいなんのこと?
そもそも我々は何時の時代に生きているかも
明らかではないではないか。
そのことだよ。
あら、それは学者さん達の考える研究テーマであって
政治のマターではないわ。
十分に政治のマターだよ。
それはもしも、われわれが判断を誤って
過去と未来の微妙なバランスをかき乱すことがあれば
時空の緩衝領域にあるわれわれの世界は蒸発してしまうかもしれないのだよ。
だとしても、別にラキ議員でなくてもいいことだわ。
未来からのフィードバックがあってこそ
過去の世界が安定し
ひいては我々の存在も肯定されることになる
だから、戦争を通じて両者のバランスを制御することのできる
彼女こそが適任であると自分は信じている。
まるで宗教ね。
まあ、私としては大企業の権益が侵されないのであれば
ラキ議員の議長就任を特別阻害するものではないわ。
残念だけど、私は阻害するよ。
そこにいる小娘の下で働くつもりはさらさらないからね。
それが受け入れられないなら
総辞職しかない!
そんなのまったく建設的ではないよ。
自分の意見が通らないから総辞職なんて
まるで子供の喧嘩と同じだな。
そうじゃないさ。
ラキ議員以外であれば、総辞職は選択しなくてもいい。
だから、十分に建設的といえるだろうね。
しかし、公式にそういえるだろうか。
無論、名門たるデビ家の当主に二言などない。
なるほど、それでは
我々が無能の象徴となる総辞職は避けるとして
暫定議長のアートマン議員に
議長をお願いするしかないだろうね。
それであれば、私も賛成だ。
アートマン議員は貴族でありながら、
庶民の生活にも理解が深いという評判ですから。
私の名前が上がったので
ここで、クラッスス議員に議事を交代していただこう。
それでは、議長として
現暫定議長のアートマン議員を推す意見に対して反対の者はおられますか。
・・・
特にご意見がないようですので、
元老院議員全員の合意により
第14代共和国準備機構元老院議長は
エフライム・アートマン議員に就任いただくことに決します。
同時に、議長にはプリンケプス(元老院議員主席)の称号を付与することを提案しますが、
よろしいですね。
・・・
はい、ご了解ありがとうございます。
それでは議事をお返しします。
まさか、小娘はエサで
最初から古狸の方が狙いとは・・・計られたか。
はてなブログに投稿しました #共和国準備機構 #元老院 #議長 #緩衝領域 #プリンケプス #過去 #未来 #デビ家
— ZAR (@zekoo_amaterasu) 2017年6月26日
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